「農業労災・安全対策」アンバサダー 特別インタビュー
「持続可能な農業は人から。―安全対策と労災保険で、農業を未来へつなぐ―」


俳優・株式会社AGRIKO代表取締役
小林涼子さん

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俳優として活躍するとともに、株式会社AGRIKO代表として持続可能な農業の実現に取り組む小林涼子さんは、全国農業会議所が推進する『農業労災・安全対策』(※)のアンバサダーに就任しました。農業への想いと、「人を守る」ための安全対策や「万が一」への備えについて聞きました。

※農林水産省令和7年度補正「雇用体制強化事業(推進体制整備コース)」の一環として、全国農業会議所が推進する取組です。
「全国各地、その地でできた農産物をいただくたびに、安心感や元気をもらっているような気持ちになりますね」と話す小林涼子さん
――東京で生まれ育ったとのことですが、農業と出合ったきっかけは?

10代、20代と駆け抜けるように必死で俳優業をやってきました。でも、オーディションに何度も落ちるなど、自分で思っていたようなキャリアが描けず、頑張れなくなってしまった時期がありました。「俳優以外の仕事は考えられない。でも、どうやってキャリアを築いていけばいいんだろう」。悩んでいた私は、家族に勧められ、2014年に父の友人が住む新潟県上越市の中山間地で、お米の収穫体験をさせてもらいました。そのご縁から、その後も農繁期に家族でお手伝いに伺うようになりました。

――農業にどんな魅力を感じましたか?

ひとことで「美味しい!」ですね。田植えや稲刈りのとき、おにぎりをいただき、「お米って何て美味しいんだろう」と感激しました。当時の私には草と見分けがつかなかった山菜を揚げた天ぷら、木から捥いで食べたイチジク…。美味しくて、忘れられません。

初めての田植えで苗箱に詰まっている苗を見ても、「これがお米になる」と信じられませんでした。でも、植えると、雪解け水で育ち、どんどん大きくなる。夏から秋へ、少しずつ首(こうべ)を垂れてくる稲穂に、サラサラと乾いた風音が流れていく。あの小さかった苗から、びっくりするほどたくさんのお米ができるという感動と、手触りのような実感がありました。

「農業機械の操作はあまり上手じゃないけど、苗箱洗いはものすごく得意です。素早く、きれいに洗えますよ」。真剣な表情で田植え機を運転する小林さん
――ご自身の気持ちに変化はありましたか?

新潟の自然に育まれた美味しさ、人の優しさ、空気といった都会とは違った豊かさを知り、私の価値観も変わったと思います。100歳のおばあちゃんから「若いんだから、まだまだ大丈夫、大丈夫」と励まされ、力をもらいました。農産物の生育状況や天候に揉まれながらも笑顔で頑張っている先輩方の言葉に、「大丈夫、私もまだまだ頑張れる」と思えるようになりました。

ひとりで頑張らず、作業を細分化する

――小林さんはどのように起業に至ったのですか?

初めて伺ったころと比べると、新潟でも耕作放棄地が増えています。とても素敵な棚田に伺っていますが、「ここで農業を維持していくのは大変だろうな」と思います。

私自身も2021年に家族が体調不良になり、「やりたいけど、できない」という状況に直面しました。コロナ禍でしたので、「続けていくことは難しいな」と肌身に感じ、どうすれば農業を持続可能な形にできるかを考えるようになりました。

その結果、株式会社という組織をつくり、みんなで農業に挑戦する「起業」を決断しました。私自身の経験から、誰でも辛い状況になりうるし、そうしたときに農業に触れることで、生産以外の〝果実〟も得られるのでは、と思いました。

――農福連携を事業の軸にしている想いは?

「いろんな人が、いろんな形で農業に携われる形はないか」と、インターネットで「農業・バリアフリー」などのワードを検索していたとき、障がい者や高齢者の社会参加を支援する「農福連携」という言葉を知りました。「私のやりたい形に近い!」と農林水産省の育成研修に参加し、農福連携技術支援者に認定されました。

起業した「AGRIKO」という会社は、新潟で稲作のお手伝いのほか、アスパラガスやホップを土地をお借りして栽培しています。もう一つは、水槽で養殖する魚の排水を循環させて水耕栽培に活用する「アクアポニックス」という方法で、ハーブや食用花(エディブルフラワー)などを栽培しています。「東京の都心でも農業の楽しさをお伝えできたら」と始めました。

どちらも障がいを持つ方たちとの農福連携を行っています。また東京では、子育て世代や定年退職された方の雇用も進めています。さらに、加工などを含めて「6次産業化」にも挑戦しています。

桜新町、白金、代々木公園BE STAGEのビル屋上を活用した農園、高輪ゲートウェイでの室内型農園など都内4カ所で展開。「ビル内の飲食店さんと連携して『ビル産ビル消』といった都市型農業を行っています」
――小林さんが考える「持続可能な農業」とは?

持続可能な農業とは「人を大切にする農業」だと思っています。農業に関わる「人」が元気じゃないと、美味しい農産物はできません。

ひとりだけで「頑張らなきゃ」と無理してしまうのではなく、肩の荷を降ろして、みんなで仕事を細分化するような体制づくりを大切にしています。自分で農業をするときも、お手伝いに行くときも、「頑張りすぎないでね」とみなさんにお話ししています。

――農作業の苦労をどんなときに感じますか?

ほとんど全部です。何をやっても「こんなに大変なのか」と。アスパラガスの雑草抜きでも、延々と終わらないし、暑くて汗だくです。ホップの収穫も夏の暑い時期です。つい夢中になって水分を摂るのを忘れて、クラクラとしてしまうこともあります。

農産物の収穫を大切にするあまり、自分たちの体調や休憩を後回しにしてしまう農業者さんも多いと思います。私たちも夏場は「気をつけようね」「30分に一回は声を掛け合おうね」と言いながら作業します。障がいを持つ方もいるので、よりこまめに休憩をとるようにしています。

安全対策に万全を期しているつもりですが、「具合が悪くなったら、遠慮なく病院に行ってね」と話しています。そう言えるのも、万が一に備えて労災保険に加入しているからです。

労災保険の加入は「万が一」でも大切な人を守る備え

――安全対策についてのお考えを教えてください

うちは、雇用している方をはじめ、協力してくださる福祉施設に通われている障がいをもった方や高齢の方とさまざまな人たちが新潟と東京の農業に携わってくださっています。何に気を付けるかは、場所やその人に合わせて常に見直し、声かけを含めて周知するようにしています。日々の円滑な勤務や、農業機械を安全に操作するために紙と動画でもマニュアルも作成しており、常に見直すようにしています。作業の細分化やマニュアル化が重要なことは、農福連携を通して学びました。

「農業は常に勉強ですね。天候など日ごとに異なる状況に合わせるしなやかさを大切にしています」と話す小林さん
――農業経営者として、「万が一」への備えをどう考えていますか?

安全対策はしっかりと考えていても、事故が起きてしまったときのことは「考えたくない」というのが、農業者の本音だと思います。でも、2021年に起業して、従業員も一緒に農業に携わるようになり、リスクについて考えたり「大丈夫だからね」「万が一のときも守るからね」と言えるようにしないと!と責任感を強く抱くようになりました。

事故が起こってしまったとき、慌てないようにするためにも、労災保険の加入は本当に大切だと思います。

――最後に、全国で頑張る農業者へのメッセージをお願いします

私自身、農業はまだまだ勉強中ですが、みなさん、美味しい農産物づくりを優先するあまり、つい自分のことは後になってしまうと思います。でも、人が元気であってこそ、美味しい農産物を作り続けることができ、持続可能な農業につながると痛感しています。

安全対策はもちろん、「万が一」のときに備えて労災保険にも加入し、安心して働ける環境をつくっていただきたいです。人を守ることが、農業を未来につないでいくことだと思います。一緒に頑張りましょう。

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